2007 年 69 巻 1 号 p. 18-23
Calciphylaxisの2症例を報告する。症例1: 49歳,男性。1995年から血液透析を受けていた。1994年両下肢安静時痛が出現,近医にて閉塞性動脈硬化症と診断され,2003年8月右腋窩-両大腿動脈バイパス術を施行された。2004年9月左下腿外側に発赤,紫斑,皮膚の壊死が出現,10月38℃台の発熱とCRP高値が持続したため11月当科入院となった。左下腿の屈伸側に硬く触れる潰瘍を認め,デブリードマンを施行したが発熱,CRPは低下せず,12月上旬ショックとpre DICとなり左下肢切断術を施行した。術後仙骨部に褥瘡が生じ,急速に拡大した。発熱,CRPは一時低下後再上昇し,右大腿にリベド型の紫斑と水疱が生じた。右心不全の増悪とともに,胸水貯留と血圧低下を来たし,1月上旬死亡した。剖検にて脂肪組織の小血管の中膜に石灰化と内膜の肥厚がみられ,calciphylaxisと診断した。症例2: 59歳,男性。1981年から血液透析を受けていた。2003年9月両足背に発赤と腫脹が生じた。本人による軽石での擦過も加わり,両足背にびらんが生じた。ステロイド外用などの治療を受けたが,潰瘍化し,膝蓋,手背にも線状の潰瘍が生じたため11月末当科入院となった。硬い皮下結節を臀部に数個触知し,CTでは動脈,腎,皮下の石灰化を認め,calciphylaxisと診断した。潰瘍は,トラフェルミン,プロスタグランディン製剤の外用,高圧酸素療法を実施したが,転院後低血圧と心不全のため血液透析実施が困難となり,潰瘍出現3ヵ月後に死亡した。