西日本皮膚科
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治療
難治性乾癬に対するシクロスポリン・リセット療法の試み
伊豆 邦夫戸倉 新樹
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2007 年 69 巻 2 号 p. 172-176

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抄録

長期外用薬使用中にその効果が減ずる乾癬をしばしば経験する。薬剤の治療効果が減弱する現象は,膠原病・リウマチ性疾患,悪性腫瘍などで認められ,薬剤耐性遺伝子産物発現によるエスケープ現象と称される。これに対し再び感受性を獲得させようとする試みが,1mg/kg/日程度のシクロスポリンA(CyA)を用いてなされ,“リセット療法”と呼称されている。この場合のCyA投与の目的は,第一義的にP糖蛋白に対する拮抗作用にある。今回我々は外用療法による治療効果が減弱した難治性乾癬2例に対し“CyAによるリセット療法”を試みた。追加検討事項として,1)乾癬患者における末梢血T細胞のP糖蛋白発現,2)リセット療法に用いたCyA内服量における正常人での血中濃度,を調べた。2例ともCyA 0.78~1.11mg/kg/日のリセット療法後に,従来の外用療法にて皮疹の改善を認めた。健常人3名におけるCyA 0.58~0.86mg/kg投与後4時間までの血中濃度(Auc 0-4)は非常に低値であったことを考慮すると,リセット療法に用いたCyAは免疫抑制作用よりもP-糖蛋白拮抗作用が中心的であると推察した。乾癬患者20名の末梢血リンパ球表面におけるP-糖蛋白の発現を調べたところ,一部の症例では異常高値を示した。リセット療法は,近年試されている低用量療法よりさらに低い量を用いたものであり,こうした量での薬効が注目される。

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© 2007 日本皮膚科学会西部支部
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