西日本皮膚科
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症例
皮膚腫瘤の出没がみられた長期生存中のAdult T-cell Leukemia/Lymphoma(ATLL)の1例
 
峯 嘉子山本 雄一平良 清人粟澤 遼子安里 豊上里 博宮城 嗣名
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2007 年 69 巻 5 号 p. 521-526

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抄録

83歳,男性。53歳頃より腹部にそう痒を伴う紅色丘疹が出現した。近医にてアレルギー性疾患といわれ加療されたが,皮疹は漸次全身に拡大した。1988年9月頃(67歳)より両側頬部に小腫瘤が出現し,増大・隆起してきたため1989年2月(68歳)当院皮膚科を受診した。当初の皮膚生検病理組織像から悪性リンパ腫を疑い,翌年左頬部腫瘤組織片を用いたsouthern blot法でHTLV-1 provirusのモノクローナルな組み込みが認められた結果から成人T細胞白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma: ATLL)と診断した。現在までステロイド外用,Interferon-alpha(IFN-α)筋注,PUVA 照射,電子線照射,軟レントゲン線(デルモパン)照射療法などで加療した。強力な化学療法を用いない治療を行ったが,症状は寛解・憎悪を繰り返しつつ現在まで約15年間生存している。皮膚に腫瘤を形成するATLLは一般に予後不良の傾向があるといわれるが,自験例のように長期生存例のATLLも存在する。過去15年間に当科で経験した皮膚腫瘤を形成したATLLは16例あり,それら症例のATLL診断後の生存期間は5ヵ月から15年間で,その平均生存期間は24.3ヵ月であった。しかし16例のなかで5年間以上生存した症例は自験例を含めわずか2例のみであった。自験例は2004年左前腕に中心治癒傾向のある紅色局面や腫瘤の再燃がみられたが,化学療法は施行せず,軟レントゲン線照射療法や免疫療法などを行い,皮疹は消退・軽快し,現在も生存中である。

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© 2007 日本皮膚科学会西部支部
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