西日本皮膚科
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症例
持続する疼痛から基礎疾患が判明した蜂窩織炎の2例
 
高安 進澁谷 博美佐藤 精一立川 洋一
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2008 年 70 巻 3 号 p. 292-295

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抄録

症例1:69歳,男性。右下肢特に右第1趾付近に強い疼痛を訴え,右足背,下腿,大腿内側に紅斑,浮腫がみられた。コントロール不良の糖尿病を合併していた。抗生剤点滴後,紅斑,浮腫は軽快したが,右第1中足骨付近の強い疼痛が持続した。種々の血流検査を行ったところ,患肢のABI,TBI,SPPの低下がみられ,CTアンギオグラフィーにて右浅大腿動脈,膝窩動脈,脛骨腓骨動脈幹に高度石灰化,狭窄を認め,閉塞性動脈硬化症と診断した。浅大腿動脈にステントを留置し疼痛は劇的に改善した。しかし,入院中に生じた右外果の小潰瘍が治癒せず,更に前回と同じ部位に蜂窩織炎が再発したため,退院4ヵ月後に前述の膝下動脈の狭窄部位にエキシマレーザー動脈形成術を施行し,症状の改善をみた。症例2:53歳,女性。SLEのため8年前よりベタメタゾン4mg内服。右下腿,足背に発赤腫脹。抗生剤8日間投与後,右外果付近に暗赤色斑,腫脹が限局し疼痛を伴った。化膿性滑液包炎と診断し切開排膿,高気圧酸素,持続陰圧療法を行ったが,切開創が閉鎖しないまま退院した。その後,SLEの活動性はほとんどないと判断されプレドニゾロン5∼10mg/日に減量し,切開4ヵ月後に創は閉鎖した。自験例のように抗生剤投与,安静など通常の蜂窩織炎の治療にもかかわらず疼痛が限局した部位に持続する場合は,その原因を注意深く検索する必要があると考えられる。

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© 2008 日本皮膚科学会西部支部
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