西日本皮膚科
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症例
多彩な皮膚病変を呈した慢性GVHDの1例
川本 導史甲斐 宜貴安西 三郎波多野 豊片桐 一元藤原 作平緒方 正男幸野 和洋那須 勝
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2008 年 70 巻 4 号 p. 381-386

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抄録

33歳,男性。31歳時慢性骨髄性白血病にて非血縁者間同種骨髄移植を施行された。移植40日後,肝酵素の急激な上昇がみられ,急性GVHD(graft-versus-host disease)と診断された。肝·胆道系酵素の上昇,汎血球減少が遷延し,慢性GVHDに移行したと考えられた。プレドニゾロン,シクロスポリン内服にて加療されるも,移植10ヵ月後に全身に紅斑,皮膚硬化が出現した。皮膚症状の改善を認めず,2003年7月当科に入院した。頭部は疎な毛髪,厚い鱗屑と痂皮を認め,顔面に色素脱失と鱗屑や血痂を付着したびらんを認めた。体幹·四肢には広範囲に色素沈着·脱失が存在し,米粒大の小水疱が散在,全指趾で爪甲の消失,指の屈曲制限を認めた。両踵,足底外側縁,母趾球部に最大5×3cmの潰瘍を認めた。組織学的に表皮下水疱,リンパ球の表皮内浸潤,液状変性,コロイド小体,真皮上層に軽度の炎症細胞浸潤,付属器周囲のリンパ球浸潤を認めた。蛍光抗体直接法,抗核抗体は陰性で,貧血,肝·胆道系酵素上昇,CRP高値,低ガンマグロブリン血症を認めた。プレドニゾロンとシクロスポリンの内服を増量し,ジフルプレドナート,アズレン外用にて加療,皮疹は改善した。経過中白血球·血小板減少を認め,シクロスポリンによる副作用と考え,タクロリムス水和物内服に変更した。足底以外の潰瘍,びらんはほぼ上皮化したが,右踵部の潰瘍は,安静や種々の外用剤,被覆剤を使用したが,難治であった。トラフェルミンとトレチノイントコフェリルの併用で踵部の潰瘍は縮小,退院5ヵ月後にはほぼ上皮化した。

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© 2008 日本皮膚科学会西部支部
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