西日本皮膚科
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綜説
中枢に移行しない第2世代抗ヒスタミン薬:
PETによる脳内移行性に関する研究
谷内 一彦田代 学岡村 信行
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ジャーナル 認証あり

2009 年 71 巻 1 号 p. 3-6

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抄録

アレルギー疾患の罹患率が高いことにより多くの人が抗ヒスタミン薬を服用している。第一世代抗ヒスタミン薬はイタリアの薬理学者Daniel Bovetにより1930~40年代に開発され,その後,多くの中枢神経系作用薬(抗精神病薬や抗うつ薬など)の原型になった。1957年にBovetはその薬理学的業績によりノーベル医学生理学賞を受賞している。抗ヒスタミン薬は,アレルギー疾患に対する効果が認められる一方で,眠気や口渇,頻脈といった副作用が問題視されてきた。そのような背景から,抗ヒスタミン薬の改良が進められ,第二世代と呼ばれる眠気の少ない抗ヒスタミン薬が登場してきた。眠気はあくまでも主観的な感覚であり,鎮静性の正しい評価には覚醒度を客観的に表す指標であるインペアード・パフォーマンス(気づきにくい能力ダウン)が提唱されている。我々はPET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影法)を用いるヒト脳内ヒスタミンH1受容体占拠率測定法を開発して,日本で市販されている抗ヒスタミン薬の鎮静性を評価している。国際標準になっている鎮静作用の少ない第二世代抗ヒスタミン薬の使用を皮膚科専門医には特にお願いしたい。

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© 2009 日本皮膚科学会西部支部
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