西日本皮膚科
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症例
胸膜原発が疑われた悪性黒色腫の1例
中野 美沙宇治野 友美高原 正和内 博史師井 洋一古江 増隆
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2010 年 72 巻 6 号 p. 595-599

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抄録

57歳, 女性。2007年8月より食欲不振, 全身倦怠感が出現し, 息苦しさを自覚したため近医を受診した。胸部Xpで左胸水および左胸膜肥厚を指摘され, 外科に紹介され, 左胸水に対し胸腔ドレナージを施行された。FDG-PETで左胸膜に多発性に異常集積が認められ, 悪性腫瘍が疑われた。対側肺や他臓器に集積は認められなかったため, 開胸下に胸膜生検術を施行されたところ, 胸腔内は黒色の腫瘤が播種状に存在しており, 一部を生検した。生検組織の病理診断は悪性黒色腫であった。術後, 胸水コントロール目的に胸膜癒着術を施行されたのち, 9月下旬に当科紹介され, 入院となった。体表に悪性黒色腫を疑う所見はなく, PET, CTでも胸膜以外に腫瘍性病変を認めなかったため, 胸膜原発の悪性黒色腫と考え, 10月よりDACTam療法を開始した。2クール終了時のCTで肺病変の増悪を認めたため, CDV療法に変更した。骨髄抑制が遷延したため, 1クール終了後, パクリタキセル単剤投与(triweekly)に変更した。6クールを施行したが, 胸膜病変の増大および, 肝転移, 腹腔リンパ節転移を認めたため, パクリタキセル療法を中止し, IFNβの局注に変更した。2週間ごとにIFNβ300万単位を皮下注していたが, 腫瘍の増大, 多発転移をきたし, 診断より1年9ヵ月で腫瘍死した。

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© 2010 日本皮膚科学会西部支部
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