2011 年 73 巻 2 号 p. 170-173
我々は全身性強皮症(systemic sclerosis : SSc)患者の胃食道逆流症(GERD : gastroesophageal reflux disease)の重症度と皮膚科的所見の相関の検討,薬物療法前後における内視鏡所見およびGERDの症状アンケート(F-scale)を基にした治療効果判定を行った。SSc患者はアメリカリウマチ協会の分類予備基準を満たし,初回内視鏡検査前に制酸薬を投与されていない10例である。薬物療法前後に同一の内視鏡医が内視鏡検査を行い,薬物療法前および治療開始3ヵ月より24ヵ月以内に治療後の判定を行った。また,検査前後にF-scaleを施行した。薬物療法前には,10例中5例(50%)に粘膜傷害を認め(改変ロサンゼルス分類でGrade A 以上),残り5例は色調変化型(Grade M)であった。Sjögren症候群,抗セントロメア抗体の有無,TSS(modified Rodnan total skin thickness score)と内視鏡的重症度との相関は認められなかった。薬物療法後F-scaleによる症状アンケートでは10例中3例に症状の増悪を認めたが,胸やけ症状だけに限れば2例で著明な改善を認めた。内視鏡所見では10例中4例は著明に改善したが,6例は不変で,完全に正常化した症例はなかった。SScに合併したGERDは薬物療法を行っても難治性であることが示唆された。また,内視鏡所見とF-scaleが一致しない症例もみられたことより薬物療法前後における治療効果判定を行う際には,内視鏡検査による評価が望ましいと考えられた。