強皮症は全身臓器の硬化を特徴とするが,消化管の硬化により生じる偽性腸閉塞はまれであるとされる。ここにわれわれの経験した本疾患の2症例の治療を中心に報告する。症例1:59歳,女性。1995年頃,びまん型全身性強皮症と診断された。2010年8月下旬より腹痛および下痢症状が出現した。腹部レントゲンおよび腹部CTで明らかな閉塞がないものの腸管の拡張を認めたため,強皮症に合併した偽性腸閉塞と診断した。絶飲食ならびに輸液で症状は改善した。症例2:63歳,女性。2008年にびまん型全身性強皮症と診断された。2010年5月下旬より下痢症状と腹部膨満が出現し次第に増悪してきた。腹部レントゲンおよび腹部CTで腸管の拡張像があり強皮症に合併した偽性腸閉塞と診断した。絶飲食と輸液で改善したが,シクロフォスファミドのパルス療法も加えて施行した。強皮症の消化器症状は患者の約8割にみられるが,偽性腸閉塞はその中でも難治性でまれとされる。本症例ならびに文献的考察から,本症例のごとく難治性の場合は,入院の上,絶飲食と輸液を行うことが第一と考えられた。