2012 年 74 巻 2 号 p. 170-173
症例は77歳の女性。2~3年前より左上腕に紅色結節を認めていた。徐々に拡大し,さらに潰瘍となり,周囲には衛星病巣を形成した。病理組織所見で類上皮肉芽腫とasteroid bodyを認めた。さらに,巨大培養およびスライドカルチャーの所見より起炎菌をSporothrix schenckii と同定し,スポロトリコーシス(固定型)と診断した。ヨウ化カリウム内服を開始し,2週間で病変は瘢痕化し,再発を認めていない。自験例は初診時よりしばらくの間,スポロトリコーシスを鑑別疾患に考えることができなかった症例である。その原因として,固定型の病型であったことや,近年スポロトリコーシスの症例数が減少していることを考えた。自験例の反省を踏まえ,難治性の結節や潰瘍をみた場合にはスポロトリコーシスを含む深在性真菌症を鑑別に挙げる必要があると考え報告する。