西日本皮膚科
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症例
血球貪食症候群を併発した薬剤性過敏症症候群の 1 例
北 和代武下 泰三松石 英城古江 増隆
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2014 年 76 巻 4 号 p. 324-329

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抄録

16 歳,男性。双極性感情障害に対し近医精神科通院中に希死念慮が強まったためラモトリギンを追加された。内服開始 2 週間後に皮疹が出現したため内服は中止され,バルプロ酸ナトリウムを開始された。 開始 5 日後には皮疹が増強し顔面に浮腫が出現した。11 病日に当科に紹介され,13 病日より入院治療を開始した。プレドニゾロン 30 mg/day の内服を開始するも改善なく,16 病日にプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム 60 mg/day の点滴へ増量した。しかし 39~40℃の発熱が持続し,22 病日には体表面積 20~30%のびらんを生じ中毒性表皮壊死症様の臨床像を呈した。ステロイドパルス療法,血漿交換,免疫グロブリン療法を施行し,また血液培養よりブドウ球菌,緑膿菌が検出されたため菌血症,敗血症に対し適宜抗生剤の投与を行った。炎症所見は改善したものの発熱は持続し 41 病日には好中球の著明な減少が出現した。血球貪食症候群 (HPS) の鑑別のため骨髄穿刺を施行したところ網内系の活性化,高度の血球貪食所見を認め,HPS と診断した。HPS は重傷感染症に類似した所見をとり,治療が遅れれば死に至る重篤な疾患である。薬剤性過敏症症候群の経過中に重症感染症様の臨床像を呈した際は HPS の鑑別を要すると考える。

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© 2014 日本皮膚科学会西部支部
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