西日本皮膚科
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症例
壊疽性膿皮症と鑑別を要した Calciphylaxis による難治性下腿潰瘍の 1 例
片野 あずさ屋宜 宣武宮里 肇
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2014 年 76 巻 4 号 p. 340-344

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抄録

72 歳,男性。1999 年から糖尿病性腎不全で維持透析中であり,2007 年 5 月の大動脈弁置換術後よりワルファリンを内服していた。2008 年 11 月より左下腿に疼痛を伴う潰瘍が出現し,半年かけて瘢痕治癒したが,両下腿に潰瘍が再燃し拡大した。2009 年 11 月に潰瘍部の皮膚病理検査を行い,真皮全層に多数の好中球の浸潤を伴う壊死と深部血管周囲や脂肪織の軽度の石灰沈着を認めた。壊疽性膿皮症を疑いステロイド剤の内服を開始したが潰瘍は急速に増大し,シクロスポリン,ジフェニルスルホンを追加投与するも無効であった。3 カ 月後に再度行った皮膚生検では,皮下の血管周囲のみならず真皮や脂肪織内での広範な石灰沈着が存在し,画像検査でも全身の小動脈の石灰化による高度狭窄と閉塞所見を確認した。最終的に calciphylaxis と診断した。ステロイド剤,免疫抑制剤,ワルファリンの内服を中止し,高リン血症への対応を行った。潰瘍に対しては外用療法とデブリードマンを継続するも紫斑や皮膚の壊死は拡大し体幹にも及び,患者は 2010 年 3 月に敗血症のため死亡した。本邦では 2009 年度から厚生労働省難治性疾患克服研究事業の一環として calciphylaxis の全国調査が行われ,その疾患認知度の低さが明らかとなった。 本症は稀な疾患ではあるが致死率が極めて高いため,疾患を周知させ,早期の診断・治療開始と予後の改善に努めていく必要がある。

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© 2014 日本皮膚科学会西部支部
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