西日本皮膚科
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症例
著明な両側眼瞼腫脹を生じた皮下脂肪織炎様 T 細胞リンパ腫の 1 例
林 健太郎宮城 拓也園崎 哲山口 さやか山本 雄一高橋 健造西 由希子仲地 佐和子友寄 毅昭益崎 裕章上里 博
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2015 年 77 巻 5 号 p. 487-491

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抄録

患者は 24 歳,女性。発熱と体幹,四肢に多発する紅斑や関節痛があり,病初期には自己免疫疾患との鑑別に苦慮していた。経過中に著明な両眼瞼腫脹を生じ,皮膚筋炎や原発性皮膚リンパ腫を疑った。ゴットロン徴候や爪囲紅斑,筋関連酵素の上昇はなく,再検した病理組織で,脂肪細胞を取り囲んで浸潤する異型細胞を認め,いわゆる rimming 像を呈していた。免疫染色で異型細胞は CD3,CD8,T cell restricted intercellular antigen (TIA-1) が 陽 性であり,CD4,CD30,CD56,EBV-encoded small RNA (EBER)は陰性であった。また異型細胞は T 細胞受容体 αβ 鎖が陽性で,γδ 鎖は陰性だった。以上の結果から,皮下脂肪織炎様 T 細胞リンパ腫(subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma ; SPTCL)と診断した。自験例は血球貪食症候群も合併していたため,治療は多剤併用化学療法を開始した。その結果,病変は消失し,治療終了後2年間再発はない。眼瞼腫脹を生じた SPTCL の報告は少なく,眼瞼腫脹はSPTCL では稀な皮膚症状と思われる。一方,眼窩悪性リンパ腫の半数が眼瞼腫脹を初発症状とし,自験例のように眼瞼腫脹を契機に診断された眼窩悪性リンパ腫の報告もあるため,眼瞼腫脹の鑑別に悪性リンパ腫も念頭におくべきであると考えた。

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© 2015 日本皮膚科学会西部支部
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