西日本皮膚科
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症例
抗 TIF1 抗体陽性の皮膚筋炎患者において順次明らかとなった多彩な皮疹・重複胃癌・嚥下障害 ―― 5年間治療観察した症例 ――
徳澄 亜紀城野 昌義丸尾 圭志富安 真二朗山中 剛尹 浩信
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2016 年 78 巻 3 号 p. 234-238

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抄録

77 歳・男性。顔面・頭部の落屑性紅斑を主訴に初診し,脂漏性皮膚炎と考えての加療に抵抗を示し,露光部の強い瘙痒を自覚する角化性紅斑や爪囲紅斑などの出現を契機に各種血液検査を行い皮膚筋炎(dermatomyositis : DM)と診断した。DM の診断後に行った画像診断・病理組織検査にて,胃に低分化腺癌を発見した。胃全摘術施行後 DM 症状は速やかに改善した。しかし術後 2 カ月より筋症状・皮膚症状とも急激に顕性化し,60 mg/日のプレドニゾロン投与を開始した。ステロイド投与後,皮膚症状・歩行障害・高筋原性酵素値は速やかに改善したが,嚥下障害のみが回復するまでに 95 日を要した。本症例では抗 TIF1 抗体が陽性であった。自験例と文献を通して,「悪性腫瘍を合併する DM においては,切除のみでステロイド投与を躊躇してはならず,嚥下障害は通常難治であるため病初期より経管栄養・嚥下訓練を開始すべき」と痛感した。寛解から 4 年後の現在まで,皮膚症状,胃癌,嚥下障害を含む筋症状の再燃は認めていない。

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© 2016 日本皮膚科学会西部支部
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