西日本皮膚科
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研究
背部の瘙痒性皮膚病変に対する自己外用補助具の開発とその有用性の検討
森上 徹也佐々木 孝志西浦 綾子石川 絵美子玉井 明日香横井 郁美中井 浩三森上 純子米田 耕造窪田 泰夫
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2016 年 78 巻 4 号 p. 395-400

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抄録

上背部の瘙痒性皮膚病変は患者自身の手が届きにくく,患者による自己外用が困難である。今回我々は,患者が自身で背部への自己外用を行うための補助具を考案,試作し,その有用性を検討するため,健常者 43 名の上背部を対象に,手と試作器の外用可能範囲の割合を調べた。上背部全体に占める手による外用可能範囲は,20∼40 代(19 名)で 55.9±19.9%,60∼70 代(24 名)で 43.6±21.2%であった。全年齢において,外用困難な範囲は肩甲骨下方であった。同じ被験者における試作器による外用可能範囲は,20∼40 代で 99.9±0.3%,60∼70 代で 99.6±1.0%と,上背部の全域に及んだ。また,背部に湿疹病変を有する患者 11 名(平均年齢 76.0±7.7歳)を対象に,試作器を使用してステロイドローションと保湿剤ローションを 2 週間外用する臨床試験を行った。上背部の外用可能範囲は,手では 33.2±20.1%だったが,試作器では 99.1±2.7%と有意に拡大した。試作器による外用 2 週間後の医師および患者による重症度評価スコア(最重症=28,皮疹なし= 0)は,ともに開始日の 1/3 に改善した。試験開始時の手による外用への患者満足度(Visual Analogue Scale,非常に満足=100,非常に不満足= 0)は 28.3±23.5 だったが,試作器は 85.4±22.6 と有意に上昇した。試作器への患者満足度は,試験開始時(85.4±22.6)と2週間後(82.5±28.5)で差がなく,満足度は維持されていた。我々が開発中の外用補助具は高齢患者の背部の瘙痒性皮膚疾患に対する自己治療に有用で,患者満足度を向上させた。

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© 2016 日本皮膚科学会西部支部
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