西日本皮膚科
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症例
手指に生じた脂腺癌の 1 例
大津 正和永瀬 浩太郎木村 裕美白井 礼子古場 慎 一井上 卓也成澤 寛
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2016 年 78 巻 5 号 p. 512-515

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抄録

症例は 75 歳,男性。初診の 1 年前に左第 3 指背側に米粒大の紅色結節を自覚した。結節は徐々に増大し,4×3.5×2 cm の広基性の紅色腫瘤となり,当院を受診した。また,初診時には左腋窩に皮下硬結を触れ,リンパ節転移が疑われた。病理組織学的に手指の病変は真皮内に結節性病変があり,腫瘍細胞はシート状に増殖し,一部表皮との連続性もみられた。腫瘍細胞は好塩基性の基底細胞に類似した細胞が主体で,内部に淡明な泡沫状胞体を持つ細胞も認めた。腫瘍細胞の核は不整型で,クロマチン増生を伴い,多数の核分裂も認めた。免疫染色は AE1/AE3,EMA がともに陽性所見を示し,Adipophilin 染色でも部分的に陽性であった。脂腺癌と診断し,1 cm マージンでの腫瘍切除および左腋窩のリンパ節郭清を行い,level Ⅰのリンパ節に転移を認めた。手指に生じた脂腺癌はきわめて稀であり,文献的考察を含め報告する。

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© 2016 日本皮膚科学会西部支部
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