西日本皮膚科
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綜説
マダニ刺症の現状と対応
夏秋 優
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2017 年 79 巻 1 号 p. 5-11

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抄録

マダニ類は野外の草地,笹藪,林内の下草などに生息し,その幼虫,若虫,成虫が野生動物に寄生して吸血するが,人間にも寄生して吸血することで種々の皮膚疾患や感染症を引き起こす。マダニ刺症の原因として東日本ではシュルツェマダニやヤマトマダニが多く,西日本ではタカサゴキララマダニやフタトゲチマダニが多い。マダニが媒介する感染症としては,国内ではライム病,日本紅斑熱,重症熱性血小板減少症候群が特に重要である。ライム病は北海道,本州中部山岳にみられ,原因ボレリアを保有するシュルツェマダニ咬着後に出現する遊走性紅斑が特徴である。日本紅斑熱は主に関東以西にみられ,原因リケッチアを保有するチマダニ類(主に幼虫と推定)によって媒介される。臨床的には高熱,発疹,刺し口が特徴である。重症熱性血小板減少症候群は主に西日本にみられ,原因ウイルスを保有するマダニ類が媒介する。高熱,消化器症状などが特徴で,死亡率が高い。タカサゴキララマダニ刺症に伴ってライム病類似の遊走性紅斑を生じた場合,tick-associated rash illness と考えられるが,現時点ではその病態は不明である。咬着したマダニは皮膚ごと切除するのが確実であるが,ワセリンや除去器具を用いる方法もあり,口器を含めた虫体の除去を確認する必要がある。マダニ刺症に対する予防的抗菌薬投与は原則として不要と思われる。マダニ刺症を診療した場合,確実な除去と感染症のリスク評価が重要である。

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© 2017 日本皮膚科学会西部支部
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