2017 年 79 巻 3 号 p. 255-259
症例 1:46 歳,男性。背部原発の転移性悪性黒色腫治療中に消化器症状が出現し,小腸重積と診断された。重積部には腫瘤性病変を認め,生検の結果,悪性黒色腫の小腸転移によるものであった。症例 2:37 歳,男性。貧血の精査中,空腸に 7 cm の潰瘍性病変を認め,組織学的に悪性黒色腫と診断された。その後,3 年前から左下腿に黒色斑を認めていた病歴が判明したため,同部位を生検したところ悪性黒色腫の消退期に合致する組織像であり,左下腿の皮膚病変が原発巣であると判断した。悪性黒色腫の小腸転移は生前での診断例は少ないものの,剖検例においては少なからず報告されており,本邦における症例をまとめたところ,自験例と同様に急性腹症を来したものも比較的多かった。悪性黒色腫の小腸転移は発見が困難であるが,それに伴う腸重積や消化管穿孔など重篤な症状を来す可能性があり,注意が必要である。