2018 年 80 巻 4 号 p. 345-348
74 歳,女性。初診半年前に後頭部右側に結節病変が出現した。生検組織では,異型の強い好酸性の細胞質を有する腫瘍細胞が充実性に増殖し,HE 染色所見,免疫組織化学染色では診断がつかなかった。全切除した際に,対側の後頭部左側にも類似した小結節が 2 カ所あった。病理所見はいずれも真皮全層にわたり腫瘍細胞が充実性に増殖し,異型のある内皮細胞様細胞が不規則な形状の間隙,管腔構造を形成していた。免疫組織化学染色では CD31,D2-40,ビメンチン陽性であった。以上より血管肉腫と診断した。PET-CT で転移病変はなく,家族の希望より後療法は行わなかった。術後 10 カ月で肺・肝臓へ転移し,weekly docetaxel 療法を 2 クール行ったが,間質性肺炎を合併した。ステロイドパルスを行ったが改善せず永眠した。自験例は,血管肉腫に特徴的な紫斑は伴わず,当初,鑑別診断として血管肉腫を挙げることができないまま,全切除に至った。タキサン系抗腫瘍薬は,頭部血管肉腫に対する第一選択薬とされ,今後も使用が増加すると考えられるが,間質性肺炎の合併に留意する必要がある。