2018 年 80 巻 6 号 p. 546-549
Mycobacterium chelonae (M. chelonae) は自然界に広く存在しており,特に免疫抑制状態にある患者での感染が多く報告されている。皮膚に感染すると,特徴的で多彩な多発病変を形成する。自験例は長期間免疫抑制薬の内服をしており免疫抑制状態にある高齢患者で,初回感染の臨床的治癒から 8 カ月後に皮膚 M. chelonae 感染が再燃した。皮膚組織に感染した M. chelonae が抗菌薬の耐性化を獲得し潜伏していた可能性が考えられる。M. chelonae 感染症の治療のメインは抗菌薬治療であるが,皮膚科領域での抗菌薬加療は単剤加療が多く行われる傾向があった。治療の中心に位置付けられる clarithromycin に対する耐性化の報告もされており,耐性化を防ぐために多剤併用で加療することが推奨されているが薬剤の組み合わせなど確立されたものはない。M. chelonae 感染症の報告例は増加しており治療は難渋・長期化するため,併用する抗菌薬の選択や治療期間,治療のエンドポイントの確立に向けて今後も検討が必要である。