症例:64 歳,男性
主訴:肛門周囲からの出血,排膿を伴う紅色結節
現病歴:初診の 1 カ月前から下着に血液汚染があった。肛門周囲と会陰部に紅色結節があり,近医で加療するも改善しないため当科を受診した。
既往歴:生来から視覚障害と聴覚障害
現症(図1 ):肛門周囲の 7 時方向に 1 つ,肛門から 5 時方向,5~6 cm 離れた会陰部に排膿を伴う 3 つの大豆大の紅色結節を認めた。肛門から会陰部の結節まで,圧痛を伴う線状の皮下硬結を認めた。
病理組織学的所見(図2 ):化膿性肉芽腫や痔瘻癌の鑑別目的に皮膚生検を行った。表皮は不全角化がみられ,真皮では毛細血管の増生と血管腔の拡張もあった。真皮の血管周囲と間質に形質細胞,好中球,リンパ球の密な浸潤がみられた。表皮は重層扁平上皮で構成され,表皮や真皮の細胞に極性の乱れや核分裂像など異型はなかった。
単純 CT 像(図3 ):直腸から会陰部右側の皮下軟部にかけて連続する瘻孔を認めた。
診断,治療および経過:培養検査で腸内細菌を検出した。以上から瘻孔部に炎症性肉芽組織を伴う痔瘻と診断し,肛門外科で手術を行う方針となった。