西日本皮膚科
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治療
進行期乳房外パジェット病に対するドセタキセルの使用経験
大塚 理紗森岡 理恵子菅 崇暢河合 幹雄秀 道広
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2020 年 82 巻 5 号 p. 377-379

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抄録

2010 年 1 月から 2019 年 1 月までに当科では 4 例の進行期乳房外パジェット病に対してドセタキセル(DOC)による化学療法を行った。全例が男性であり,初診時年齢は 50 歳から 70 歳(平均 63 歳),原発部位は陰茎・陰囊であった。いずれも拡大切除を行ったが,所属鼠径リンパ節に転移があり,さらに対側の鼠径リンパ節もしくは骨盤内リンパ節の転移が判明したため根治切除不能と判断した。DOC 単独療法を開始し,全例で PR(部分奏効)となった。経過中に PD(進行)となった 3 例に対し,DOC に加えて S-1 内服の併用療法を行い,2 例が PR となってそれぞれ 6 カ月,16 カ月経過後の現在も治療継続中である。残りの 1 例は SD(安定)であったが,PD となるまでの 7 カ月間は浮腫や疼痛,皮膚症状などの臨床症状の新規出現はなかった。副作用としては,全例に grade3~4 の白血球減少が生じたが,治療の中断に至る症例はなかった。S-1 を追加した 3 例に関しても,副作用の増強はなかった。進行期の乳房外パジェット病は,予後が極めて悪いにもかかわらず,現在確立された化学療法はない。DOC 単独療法,もしくは DOC と S-1 併用療法は比較的簡便で外来通院でも実施可能であり,今後ファーストラインの治療法となり得ると考えられる。しかし,未だ報告されている症例数が少なく,また観察期間も限られているため,今後さらなる症例の蓄積の上にレベルの高いエビデンスの構築が必要であると考え今回自験例を報告する。

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