西日本皮膚科
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症例
成人 T 細胞性白血病リンパ腫の患者に生じ,初診時の診断が困難であった汎発性帯状疱疹の 1 例
加来 裕美永瀬 浩太郎森 槙子井上 卓也成澤 寛
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2020 年 82 巻 6 号 p. 451-454

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抄録

83 歳,女性。初診の 4 日前から体幹に紅斑および水疱が出現し,徐々に全身に拡大した。成人 T 細胞性白血病リンパ腫(adult T cell leukemia/lymphoma:ATLL)の既往あり。初診時,皮疹の臨床形態から水疱性類天疱瘡や薬疹,ATLL の特異疹・非特異疹を疑った。しかし,その 3 日後より左三叉神経第 2, 3 枝領域に特徴的な帯状の浮腫性紅斑,水疱の多発を認め,さらに全身の水疱数カ所で Tzanck test 陽性所見が得られたため,自験例を ATLL 患者に生じ汎発疹が先行した汎発性帯状疱疹と診断した。帯状疱疹は,水痘発症後に脊髄後根神経節に潜伏感染していた水痘帯状疱疹ウイルスが免疫抑制的な機転により再活性化して発症する。ウイルスが増殖しウイルス血症を来した場合に,通常の帯状疱疹の皮疹に加え全身に散布疹を伴うことがあり,汎発性帯状疱疹と呼ぶ。これまでに国内外を含めて,自験例ほどの高度な汎発疹を呈した汎発性帯状疱疹の報告例は調べえた限り認めない。また,自験例では帯状皮疹に先立って高度な汎発疹を形成しており,その非典型的な臨床像と病状経過について考察する。

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© 2020 日本皮膚科学会西部支部
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