西日本皮膚科
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症例
瀬戸内海に生息するナルトビエイによる外傷後に生じた Mycobacterium marinum 感染症の 1 例
谷本 尚吾川上 佳夫安富 陽平山﨑 修森実 真
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2020 年 82 巻 6 号 p. 460-463

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抄録

71 歳,男性。2018 年 8 月上旬に,瀬戸内海での漁で網にかかったナルトビエイ(Aetobatus narutobiei)を外していた時に,尻尾の棘が左小指の基部に刺さった。直後に海水で洗浄し,しばらく自宅で様子をみていたが,同部位が次第に腫脹してきたため,1 カ月半後に当科を受診した。初診時,左小指 MP 関節の背側に中心がクレーター状に陥凹し,潰瘍化している 15×14 mm の紅色結節を認めた。組織片を 2%小川培地に接種し,30℃と 35℃の条件下で培養を行ったところ,いずれの条件下でも 28 日目に灰白色のコロニー形成を認め,MALDI-TOF MS のマススペクトルのパターンから Mycobacterium marinum と診断した。皮膚病変はミノサイクリン塩酸塩(200 mg/日内服を 3 カ月間)を投与して完治した。エイ刺傷は,その鋭利な尾棘による損傷と刺毒による炎症を特徴とし,創部感染のリスクもある。近年ナルトビエイの瀬戸内海での生息域の拡大が問題視されている。そのため,エイ刺傷への対応を知ることは大切である。

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