2021 年 83 巻 2 号 p. 129-133
69 歳,男性。初診の 20 年以上前に,陰囊に生じた有棘細胞癌に対して切除・左リンパ節郭清術後,放射線治療,化学療法が行われた。初診の 3 年前から陰囊に小結節や潰瘍を繰り返し,その都度切除され有棘細胞癌の診断であった。その後,前医で撮影された MRI 検査で左外腸骨リンパ節腫大の疑いがあり,当院へ紹介となった。当院にて行った PET-CT 検査で,左尿管と右鼠径リンパ節に集積を認めた。当院でリンパ節生検を行ったところ,有棘細胞癌の転移の所見を認め,右鼠径~外腸骨リンパ節郭清を行った。今後も有棘細胞癌の再発の可能性が高いと考え,陰囊皮膚の全切除および分層植皮術を行った。また,同時期に左尿管癌と膀胱癌を指摘され,当院泌尿器科にて治療された。自験例は,陰囊有棘細胞癌と尿路系悪性腫瘍という重複癌を発症した稀な症例である。両者の危険因子には共通するものが多く,何らかの発癌因子が関係している可能性が考えられた。