西日本皮膚科
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症例
腸管囊腫様気腫症を併発したオーバーラップ症候群 (全身性強皮症, 全身性エリテマトーデスおよびシェーグレン症候群)の 1 例
岩田 潤一金綱 友木子澤田 郁小越 達也留野 渉高橋 一夫
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2021 年 83 巻 3 号 p. 198-204

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抄録

67 歳,女性。2012 年 9 月露光部の紅斑,円形脱毛症を主訴に当科初診。精査にて全身性エリテマトーデス,シェーグレン症候群と診断。皮疹はステロイド外用剤で落ち着き,臓器障害なくステロイド全身投与せずに経過観察となっていた。2016 年頃より手指のこわばりや手指の硬化を認め,2017 年 11 月抗 RNP 抗体が 550 U/ml と高値であり,全身性強皮症合併のオーバーラップ症候群と診断。2017 年 12 月より下痢,嘔気が持続。2018 年 1 月,胸部 X 線で横隔膜下に遊離ガス像,腹部 CT で腸管壁内気腫を認め,全身性強皮症背景の腸管囊腫様気腫症と診断。その後も下痢,嘔気,食思不振,体重減少が持続し, 2018 年 6 月加療目的に当科に入院。入院中に Klebsiella pneumoniae による敗血症を 2 回,Candida parapsilosis による敗血症を 1 回,血管内カテーテル感染と思われる methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis による敗血症を 1 回発症した。腸管囊腫様気腫症は全身性強皮症の消化管病変の終末像で根本的治療は現時点ではない。我々は抗菌薬による腸内細菌の制御と長期栄養管理を見据えて在宅中心静脈栄養の導入を試みたが,最終的には 2018 年 10 月にカンジダによる敗血症で死亡。剖検では小腸に内輪筋,外縦筋の萎縮と線維化を認めたが腸管壁内気腫はみられなかった。全身性強皮症やオーバーラップ症候群に併発した腸管囊腫様気腫症では敗血症を考慮した管理が必要である。

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