2021 年 83 巻 4 号 p. 335-338
患者:73 歳,男性。既往にアトピー性皮膚炎がある。経過の詳細は不明であるが後頭部から頭頂部にかけてだるま型の脱毛斑が生じた。脱毛部の皮膚は肥厚していた。皮膚生検標本では表皮が菲薄化し,毛包の不規則な分布と歪な形態,真皮膠原線維の増生・硝子化が認められた。真皮上層には稠密なリンパ球,組織球,形質細胞の浸潤が認められた。免疫組織化学染色では IgG4 陽性細胞の強い浸潤があり,IgG4 陽性細胞数/IgG 陽性細胞数比は 58%であった。血清 IgG4 値は 313 mg/dl と高値を示し(正常値:11~121),組織学的所見と併せて IgG4 関連疾患と診断した。なお,他臓器の IgG4 関連疾患は指摘できなかった。ステロイド外用剤により,皮膚の肥厚は改善したが脱毛斑は残った。過去に IgG4 関連疾患としての脱毛症の報告は 2 例しかなく稀な病態だと考えた。これらを比較検討した結果,病態の経過が長いほど瘢痕化が進んで治療抵抗性となる可能性が示唆された。