2021 年 83 巻 4 号 p. 348-350
53 歳,女性。生下時より腰部右側から腹部右側にかけて広範囲な淡い褐色斑の中に小さな濃い褐色斑がびまん性に散在する病変(speckled lentiginous nevus)があった。初診の数年前から腰部の褐色斑の一部が黒色調となり徐々に隆起し,出血するようになった。全切除生検の結果,悪性黒色腫(tumor thickness 9 mm)であったため拡大切除とセンチネルリンパ節生検を施行した。センチネルリンパ節に転移はなく,最終的に表在拡大型悪性黒色腫(pT4bN0M0 StageⅡC)と診断した。その後,無治療で経過観察していたが術後7 カ月で肝,坐骨直腸窩,両副腎,多発骨転移を生じた。BRAF 遺伝子変異は検出されなかったため,抗 PD-1 抗体の投与を開始したが投与開始後 5 カ月で永眠した。Speckled lentiginous nevus 上に悪性黒色腫が発生することは 0.13~0.2%と比較的稀であり,症例の蓄積が必要であると考え報告する。