2021 年 83 巻 6 号 p. 540-544
43 歳,男性。既往歴に歯槽膿漏,齲歯,無治療の糖尿病がある。初診の 4 日前から右足全体に発赤・腫脹が生じ,強い疼痛を伴っていた。血液検査では CRP 33.5 mg/dl,血糖値 423 mg/dl,HbA1c(JDS)10.9%,白血球数 26,900/μl(Neu 86.7%)であった。CT 検査で足背,足底にガス像を認め,ガス壊疽と診断した。3 次元 CT 画像では足底の筋膜(腱膜)に沿って,ガスが広がっているように観察された。緊急手術で局所麻酔下に足背・足底の皮膚切開をしたところ黒色の壊死物質と排膿を認めた。細菌培養では Porphyromonas species(Porphyromonas sp.)の他,多数の菌種が同定された。その後,感染はコントロールされ,最終的には遊離植皮術で再建し,第 70 病日に退院した。Porphyromonas sp. は口腔内や消化管に分布する常在菌であり,今回のガス壊疽は歯槽膿漏,齲歯が原因となっていた可能性が示唆された。