西日本皮膚科
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症例
多発性のエクリン汗孔腫で発症し,その 2 年後に慢性骨髄単球性白血病を発症した症例
中川 浩一岡林 綾東田 理恵
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2022 年 84 巻 3 号 p. 211-214

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抄録

82 歳,男性。既往歴に糖尿病,狭心症(冠動脈バイパス術後),慢性心房細動があったが悪性腫瘍はなかった。初診の 3 カ月前から頚部左側,左中指,右下腿に紅色結節が生じて当科を受診した。いずれも径 2 cm までの小腫瘍であり,切除・生検を行った。病理組織学的に小型の poroid cell が包巣の大部分を占め,汗孔腫と診断した。その後,経過を見ていたが,2 年後より徐々に白血球数が増加し(22,500/μl,Mono 37.0%),骨髄穿刺では顆粒球系と巨核球系の 2 系統の異型性を認めた。慢性骨髄単球性白血病と診断されたが,高齢のため経過観察となった。その後も病勢の進行は緩徐であった。白血病診断の約 2 年後には白血球数が 47,400/μl と増加したのでヒドロキシカルバミドの投与が開始となった。さらに抗がん剤開始の半年後には背部に 4 個目の汗孔腫が生じた。多発性汗孔腫の発生については,造血器系悪性腫瘍の既往やこれに対する放射線治療・化学療法との関連が論じられているが,多発性汗孔腫が先行した症例は内外を通じて最初であった。

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© 2022 日本皮膚科学会西部支部
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