2007 年 56 巻 2 号 p. 193-196
当院関連病院で治療した,大腿骨近位部骨折を伴う90歳以上の骨粗鬆症患者の機能予後および生命予後について検討した.対象は1996年から1998年までの3年間に入院治療を行った48例(男性7例,女性41例)であり,全例に観血的手術が行われた.生命予後に有意な影響を与える因子として,術前全身状態,受傷前歩行能力,術前合併症数,椎体骨折数,骨折タイプ,術式が挙げられ,術前全身状態が悪く,受傷前歩行能力が低く,術前合併症数や椎体骨折数が多く,内側骨折,人工骨頭例で生命予後が劣っていた.機能予後に有意な影響を与える因子として,術前全身状態,術前後の痴呆が挙げられ,痴呆の重い症例ほど術後の歩行再獲得率は劣っていた.超高齢者の大腿骨近位部骨折の治療は,単に骨折部を治療するだけではなく,骨粗鬆症,痴呆などを含む全身状態が大きく関与しており,これらに対する多方面からの総合的アプローチが必要である.