2007 年 56 巻 3 号 p. 423-426
膝窩部に生じた骨化性線維粘液性腫瘍の1例を経験したので報告する.症例: 59歳女性.7~8年前から左膝窩部に腫瘤を触知していたが放置していた.下肢のだるさ・易疲労性を自覚し,紹介受診となった.左膝窩部に62×47 mm大の硬い腫瘤を触知した.X線像では関節外に地図状の石灰化陰影を認め,MRIではGdで造影される部分や嚢胞状の部分を認めた.切開生検でわずかに骨化を伴っていたが特徴的な所見に乏しく診断確定できなかった.低悪性度腫瘍と考え辺縁切除術を行った.腫瘍はヒラメ筋内に存在し線維性被膜を有していた.神経血管とは被膜外で剥離できた.病理学的に星状の異型細胞が粘液腫状基質を背景に増殖した部分と細胞密度の低い部分がみられた.一部に石灰化を伴い,核分裂像は乏しかった.免疫染色ではvimentinのみ陽性であったがその他のマーカーは陰性であった.病理所見からOssifying fibromyxoid tumor, low gradeと診断した.術後約6ヵ月の現在,局所再発・肺転移ともになく経過観察中である.本腫瘍は一般に良性の臨床経過をたどり,完全に切除できれば治癒すると報告されている.しかしながら,局所再発や肺転移を生じた症例の報告もあり今後慎重な経過観察が必要と考えた.