2007 年 56 巻 4 号 p. 533-535
舟状骨偽関節が原因と考えられた長母指屈筋腱皮下断裂の1症例を経験した.症例は53歳,男性.右手のむくみ感,違和感を感じた後,右母指IP関節の屈曲が不能となった.中学生時に右手関節外傷の既往があるが放置していた.X線画像では舟状骨の偽関節が認められた.理学所見とMRIから長母指屈筋腱断裂と診断した.MRIは診断に非常に有用であった.手術は,舟状骨遠位骨片摘出と長掌筋腱の腱移植を行った.結果は,可動域制限が残ったものの,ピンチ力の改善によって,患者の高い満足度が得られた.今回我々は,腱移植と舟状骨遠位骨片摘出を行ったが,遠位骨片摘出については母指の短縮,ピンチ力の低下など今後の経過を診ていく必要があると考える.