2007 年 56 巻 4 号 p. 585-588
症例は29歳男性.14ヶ月前より頸背部痛,腰痛が出現.近医外来にて加療したが症状軽快せず,総合病院入院.頸椎から仙椎にかけての多発する溶骨性変化,Th1/2,3/4,7の硬膜外膿瘍および腸骨,肋骨に溶骨性変化を認めた.骨生検にて乾酪性肉芽腫,ラングハンス巨細胞,抗酸菌を認めたことから多発性骨結核と診断され,抗結核薬の内服を開始したが,内服加療開始後よりTh4以下のしびれが出現し,両下肢不全麻痺を呈した.約6ヶ月間の抗結核薬内服と臥位安静加療を行ったが麻痺の十分な改善が得られなかったため当科入院.Th3,4に認めた膿瘍が硬膜管を圧排しており,後方よりインストゥルメンテーションを使用した7椎間におよぶ脊椎固定術,骨移植術を施行し,症状の著明な改善を得た.術後4ヶ月で再発兆候はなく,独歩も可能となった.今回我々は,病変が極めて広範囲である稀な骨結核の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.