2008 年 57 巻 3 号 p. 388-391
症例)70歳,女性.平成15年2月,某総合病院で腟癌に対し腔内外照射を行った.平成17年1月より右大腿部痛出現し同院受診.股関節X線で異常なかったが,MRIでは両側臼蓋の一部に骨壊死を認めた.同年7月より疼痛増強.8月の当科初診時X線では右大腿骨頭の圧潰と臼蓋の破壊を認め,人工股関節置換術を施行.平成18年12月より左大腿部痛出現.X線では変化なかったが,次第に疼痛増強.平成19年2月,近医でリハビリ中に下肢長差を指摘され,X線で左大腿骨頚部骨折を認めた.臼蓋部の骨壊死を考慮し人工股関節置換術を施行した.現在,疼痛の訴えや歩行障害はみられない.考察)本症例では照射より2年後に症状出現したが,X線では異常なく,MRIで臼蓋の壊死を認めるのみだった.しかし,その数ヵ月後に広範な股関節破壊,骨折を呈している.放射線骨障害は障害の範囲も広く,進行も急速であるため既往歴の聴取に注意が必要である.