2008 年 57 巻 3 号 p. 485-488
比較的稀とされている上腕三頭筋皮下断裂の症例を経験したので報告する.症例は17歳,男性.柔道の試合で120kgの相手が右肩背部より乗りかかってきた時,右肘軽度屈曲位で手をついて受傷.試合後も右肘の疼痛と腫脹が続くため,受傷後3日目に当科を受診した.右肘は全体的に腫脹しており,肘頭部に圧痛を認め,自動伸展は不能であった.単純X線側面像で肘頭近位部に肘頭より裂離したと思われる微小骨片を認めた.以上の所見より肘頭裂離骨折を伴った上腕三頭筋皮下断裂と診断し,受傷後16日目にsuture anchorを2本用いて縫着した.術後は肘関節軽度屈曲位にて3週間のlong arm cast固定後に自動可動域訓練,筋力訓練を開始した.柔道の練習再開は術後5週目より自己判断で行っていた.スポーツ選手については本症例のように早期に練習を再開する傾向があり,その対策も重要であると考えられた.