整形外科と災害外科
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脊髄空洞症により発作性掻痒を生じた1例
森本 忠嗣矢吹 省司釘本 康孝浅見 昭彦
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2008 年 57 巻 4 号 p. 647-651

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抄録

日常診療において,神経障害による痒みを経験することは稀である.今回我々は,脊髄空洞症によって発作性掻痒を生じた1例を経験したので報告する.症例は18歳,女性である.主訴は右上肢痛であった.MRIからキアリ奇形に伴う脊髄空洞症と診断し,大後頭孔減圧術を施行した.術後1年で空洞は縮小し,痛みは軽減したが,疼痛部位に痒みを訴えた.痒みは知覚障害の領域に一致し,掻くことによる改善を認めなかった.神経障害により痒みをきたす疾患として,多発性硬化症が報告されている.そして,痒みの病態としては脊髄後角障害であると考えられている.脊髄空洞症においても,脊髄後角が障害されることにより痒みが発生するという類似した機序が推察される.脊髄空洞症では,痒みを神経症候の一つとして認識し,診断や診療にあたる必要があると思われた.

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© 2008 西日本整形・災害外科学会
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