整形外科と災害外科
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多発性骨髄腫に生じた大腿骨頚部病的骨折の1例
樫原 稔
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2009 年 58 巻 3 号 p. 390-393

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抄録

多発性骨髄腫に生じた大腿骨頚部病的骨折のまれな1例を経験したので報告する.症例は79歳男性で誘因なく右殿部から大腿の痛みが出現し,3日後に歩行困難になり入院した.X線では骨折を認めず,2日後に疼痛増強し歩行不能になりX線で右大腿骨頚部骨折を認めた.血清M蛋白および尿Bence-Jones蛋白を認め,IgAκ型多発性骨髄腫と診断した.人工骨頭置換術を行い,摘出した骨頭の病理組織像は骨髄が非常に低形成で大きな核小体を伴う形質細胞類似の細胞が存在し,エオジン好性でCongo Red染色陽性物質を認め,多発性骨髄腫のアミロイド骨嚢腫を伴う大腿骨頚部病的骨折と診断した.高齢で骨髄抑制や細胞障害等の副作用を考慮し,化学療法や放射線療法は行わず,1年5ヵ月後に腎不全で死亡した.多発性骨髄腫の約10%にアミロイド沈着がおこり,本症例のようなアミロイド骨嚢腫による長管骨病的骨折や手根管症候群が報告されている.

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© 2009 西日本整形・災害外科学会
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