2009 年 58 巻 4 号 p. 643-646
今回我々は,小児の橈骨遠位端骨折のうち,保存的治療を行った群と,pinning手術を要した群とで比較検討し,保存的治療の限界とpinningの適応について考えた.症例は平成18年から当院にて治療を行った撓骨遠位端骨折23例を対象とした.性別は男19例,女4例であった.受傷時年齢は平均11.2歳(5歳~16歳),平均観察期間は7カ月であった.X線側面像にて,angulationとtranslationを計測した.angulationは橈骨長軸に対する遠位骨片の傾きとし,translationは橈骨横径に対する骨片転位の割合として評価を行い,初診時と徒手整復時の比較検討を行った.保存療法群とpinning群の比較では,translationに関しては,初診時が保存療法群に比較してpinning群の方が有意に転位が大きかった.受傷時の転位が軽度でも,背側骨皮質に粉砕を伴う症例で再転位を2例に起こした.受傷時angulation,translationが大きい症例や,たとえ転位が軽度でも背側骨皮質の破壊を伴う症例では,当初からpinningの適応と考える.