2011 年 60 巻 1 号 p. 85-88
高齢者頚椎外傷において,頚椎・頚髄損傷例増加に伴い,特有の問題が指摘されている.今回,当院救急外来を受診した頚椎外傷5836例中,65歳以上の高齢者801例について調査した.意識障害21%,重症頭部外傷15%,四肢骨盤骨折16%,他部位の疼痛を有する症例27%であった.また,頚椎・頚髄損傷を62例(7.7%),非骨傷性頚髄損傷を24例(3.0%)に認めた.脊柱管狭窄,OPLL合併については,それぞれ頚椎・頚髄損傷例,非骨傷性頚髄損傷例共に有する割合が高かった.今回の結果より,救急外来における高齢者頚椎外傷診察の難渋性が示唆された.高齢者の頚椎外傷は高齢者外傷の特殊性と高齢者頚椎・頚髄損傷の特徴を理解して診療にあたる必要がある.