抄録
小児の大腿骨頸部骨折は比較的稀な骨折である.今回,当院における本骨折についての治療と成績について検討を行ったので報告する.年齢は2カ月から14歳(平均6.8歳),経過観察期間は3カ月から5年3カ月(平均2年7カ月)であった.骨折型はDelbet-Colonna分類を用いII型2例,III型5例,IV型3例であった.良好な整復位が得られた1例と乳幼児2例は牽引による保存的治療で良好に治癒した.一方,観血的治療を行った7例中,内反股変形が2例,骨頭壊死が3例認められた.Ratliffの評価基準ではgood 7例fair 3でpoorの症例は認められなかった.本骨折の合併症である骨頭壊死,内反股,骨端線早期閉鎖,偽関節については様々な報告があるが未だ一定の見解はない.小児の大腿骨頸部の解剖学的特徴や受傷機転から考えると骨頭壊死の発生は受傷時にある程度運命付けられており,正確な整復にこだわり内反股や骨端線早期閉鎖等を防ぐことが最重要であると思われた.