2012 年 61 巻 4 号 p. 663-664
【目的】硬膜内腫瘍手術などに対する硬膜縫合時には,ポリグリコール酸フェルトを用いた修復が一般的であるが,術中生じた硬膜損傷に対しては閉鎖性髄液漏を形成することもある.皮下にまで至る大きな閉鎖性髄液漏の場合や,小さくても頭痛などの原因になる場合は,再手術が必要となる.2009年以降,筋膜パッチによる硬膜再建に加えてポリグリコール酸フェルトを用いて髄液漏閉鎖術を行った自検例につき報告する.【対象と方法】術中硬膜損傷もしくは,広範囲の腫瘍摘出のため硬膜温存ができずに術後閉鎖性髄液漏を生じた5例に対し,本再建術を施行した.スパイナルドレナージは全例に併用した.【結果と考察】全例,術後髄液漏は消失した.頚髄髄内腫瘍の1例に癒着性クモ膜炎が残存した.髄液漏は,術中明らかでない場合もあり見逃すこともあるが,稀に重篤な合併症を併発することもあり,看過できない合併症である.文献的考察を加えて報告する.