2012 年 61 巻 4 号 p. 683-687
大腿骨高度骨欠損をともなう人工股関節ゆるみに対して,Impaction bone grafting(IBG)法で遠位髄腔を再建,腫瘍用人工股関節で再置換術を施行した症例を報告する.症例は76歳,女性.25年前に大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭挿入術施行.術後2年でステム周囲骨折を生じ,ロングステムへの入れ換え+メネンプレートによる骨接合を施行されたが,骨折部は偽関節となり,ステムの沈下が進行,ステム先端が大腿骨外顆関節面を穿破しかけた状態で当科紹介となった.近位大腿骨は全周性高度骨欠損を生じており,腫瘍用人工股関節による再建を選択した.ステム挿入部にあたる遠位髄腔をIBG法で再建し,ステムをセメント固定した.術後2週で初回脱臼をきたし,頻回脱臼となったが,ステム補綴長を延長し,脱臼抵抗性の獲得が可能であった.本法は本症例のような大腿骨近位全周性骨欠損に対する有用な再建方法であると考えた.