極めて稀な一卵性双生児に発生した多発性神経鞘腫を経験したので報告する.48歳男性.腰痛と左鼠径部・下肢痛にて発症し,多発性の馬尾腫瘍を認めたため摘出術を行った.病理所見は神経鞘腫であった.胸髄や左大腿部にも腫瘤を認めた.38歳男性.左側胸部及び背部痛にて発症し,胸髄腫瘍を認めたため摘出術を行った.その後腰椎,右上腕と続発したため手術を行った.父親も皮下腫瘤を自覚していた.神経鞘腫症と神経線維腫症2型との鑑別が必要となったが遺伝子診断は拒否された.聴神経腫瘍の存在が鑑別の決め手となるが検査は今後本人の許可を得て施行する予定である.免疫染色の結果は多発性神経鞘腫症に見られるモザイク状INI-1免疫染色像は認めなかった.以上より今のところ神経線維腫症2型による多発性神経鞘腫が最も疑われる.しかしいずれにせよ発症時期・部位・進展形式は一卵性双生児の場合であっても異なる場合があるということが明らかとなった.