整形外科と災害外科
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脊髄くも膜嚢腫の治療経験
井上 哲二福田 和昭中島 三郎宮﨑 信沼田 亨祐橋本 憲蔵田村 諭史
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2014 年 63 巻 3 号 p. 537-541

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抄録

比較的まれな硬膜内脊髄くも膜嚢腫手術例を2例経験したので報告する.症例1:73歳 女.主訴:左半身のしびれ.JOA頚髄症スコアは13.5点であった.上位胸髄背側の硬膜内くも膜嚢腫を後方進入で全切除した.上肢機能は改善されるも,体幹以下の機能低下により退院時JOAスコアは12点と低下した.症例2:51歳 女.主訴:臍以下の痺れと痛み.歩行障害.上肢評価項目を除くJOA頚髄症スコアは6点であった.広範囲の脊髄腹側硬膜内くも膜嚢腫に対し後方進入で嚢腫尾側端を切開しくも膜下腔と交通させた.術後28か月の最終観察時,JOAスコアは8点と術前より改善した.症例1のように胸髄レベルのくも膜嚢腫により上肢症状を呈し,画像所見との乖離を認める症例が報告されており,診断には注意を要する.症例2では短期ではあるが嚢腫壁開放による減圧術で症状改善されており,全切除困難もしくは不能例では有効と考えられた.

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© 2014 西日本整形・災害外科学会
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