2014 年 63 巻 3 号 p. 600-602
高齢者の反復性肩関節前方脱臼に対して,鏡視下に骨性バンカート修復と腱板修復を施行した1例を経験したので報告する.症例:67歳男性.10年前に船上で転倒し右肩を受傷した.近医を受診し,右肩関節脱臼の診断にて徒手整復を受けた.その後,容易に脱臼を繰り返すようになり,精査治療目的で当科紹介となった.初診時理学所見で右肩自動可動域は屈曲150度,外転120度と制限を認め,前方脱臼不安感テストが陽性であった.3D-CT検査では骨性バンカート損傷,MRI検査では棘上筋断裂を認めた.骨性バンカート損傷と腱板断裂の合併した反復性肩関節前方脱臼と診断し,鏡視下にてバンカート修復と腱板修復を施行した.術後の3D-CT検査では骨癒合を認め,MRIで腱板修復状態は良好であり,前方脱臼不安感テストは陰性となった.鏡視下手術は低侵襲で両病変の処置が可能であり,本病態に有用と考えられた.