2015 年 64 巻 2 号 p. 204-209
当科において人工関節術後に症候性肺塞栓症を呈した症例を検証した.【症例1】60歳女性.左人工股関節置換術後5日目に胸部不快感を認めた.右肺動脈および左膝窩静脈に血栓を認めた.下大静脈フィルターを留置後,抗凝固療法にて血栓は消失した.【症例2】79歳女性.右人工膝関節置換術(TKA)後大腿骨顆上骨折を起こし,右大腿静脈に血栓を認めた.一時留置型下大静脈フィルター留置後,骨接合術を施行したが,術後,フィルターの転位を認め,さらに右肺動脈内に血栓を認めた.一時留置型下大静脈フィルターを抜去および永久型下大静脈フィルターを挿入し,抗凝固療法にて血栓は消失した.【症例3】71歳女性.右TKA術後3日目に右肺動脈および右膝窩静脈に血栓を認めた.術後5日目に一時心肺停止となり,蘇生術を行った.抗凝固療法後,血栓は消失し,症状も軽快した.【考察】症候性肺塞栓症は抗凝固薬を投与していても起こる可能性がある.また,下大静脈フィルターは肺塞栓症の予防に効果的であるが,合併症も存在し,使用には注意を要する.