整形外科と災害外科
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鼠径部軟部組織悪性腫瘍切除に伴う血行再建術後にMRSA感染を生じた1例
宮田 倫明富田 雅人尾﨑 誠
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2016 年 65 巻 1 号 p. 75-77

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抄録

【はじめに】鼠径部軟部組織悪性腫瘍に伴う血行再建術後にMRSA感染を生じた1例を経験し良好な結果を得たので報告する.【症例】症例は72歳の男性である.右鼠径部に発生した低悪性型筋線維芽細胞肉腫に対して血管合併切除を行ない,人工血管を用いた血行再建を行った.術後リンパ漏と創縁の皮膚壊死を生じたためデブリードマン,Vacuum-assisted closure(VAC®)装着,分層植皮を行い創閉鎖していた.術後42日目に創部より排膿ありMRSAが検出された.治療はVAC®システムを用いて人工血管を温存する方法を選択した.VAC®装着期間は35日間,感染発生から創閉鎖までの期間は65日間であった.創閉鎖から現在まで感染の再燃はみられていない.【考察】以前は人工血管の感染に対して抜去が一般的であったが,近年VAC®療法によって人工血管を温存する報告も散見される.VAC®療法は人工血管感染において下肢の虚血を防止でき有効な治療法の選択肢となり得ると考えた.

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© 2016 西日本整形・災害外科学会
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