2016 年 65 巻 2 号 p. 260-264
脊柱管内外に発生した骨腫瘤性病変にて神経症状を呈した1症例を経験したので報告する.症例は43歳,男性.腰痛,右鼡径部痛,下肢痺れにて発症した.腰部に安静時痛および叩打痛があり,右膝蓋腱反射の消失と右L2,3領域の知覚鈍麻を呈していた.また,皮膚病変などの他疾患の合併は見られなかった.画像検査ではL1/2脊柱管内およびL2/3右椎間孔内外に腫瘤性病変を認めた.手術はL1-3の除圧,可及的腫瘍切除および後方固定術を行った.病理組織検査は骨軟骨腫であった.今回の症例では鑑別疾患として多発性骨軟骨腫症,類骨腫,黄色靭帯骨化症などが挙げられたが,病理学的には骨軟骨腫であった.脊柱管内・外もしくは椎間孔内に発生する報告は少なく,比較的稀と考えられた.また腫瘍の全摘出は困難であり,今回の症例も部分摘出に終わっているが,軟骨肉腫などへの悪性化の報告もあり今後慎重な観察を行っていく必要がある.