整形外科と災害外科
Online ISSN : 1349-4333
Print ISSN : 0037-1033
ISSN-L : 0037-1033
外傷手術待機期間中のヘパリン投与によりヘパリン誘発性血小板減少症をきたした一例
越智 宣彰佐羽内 研川﨑 展森 俊陽辻村 良賢西村 春来酒井 昭典
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 66 巻 2 号 p. 306-309

詳細
抄録

症例は関節リウマチで治療中の74歳女性.転倒して体動困難となり当科を受診した.単純X線上,右大腿骨頚部骨折と診断し,手術を予定した.脳梗塞の既往があり,抗血小板薬を内服していたため他院に待機入院の上,ヘパリンへの置換を行った.受傷後11日目に当院に転入院した際,受傷日に17万/μlであった血小板数が6.4万/μlと著明に減少していた.臨床的に出血を示唆する所見は無く,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の臨床診断指標となる4T's scoreが6点と高スコアであったため,HITを強く疑った.造影CT検査を行ったところ,肺動脈本管から右下肺動脈および右大腿静脈に血栓を認めた.直ちにヘパリンを中止して抗トロンビン薬の投与を行うことで,病態は改善した.血清学的検査によりHITの確定診断を得た.HITは抗凝固薬であるヘパリンが凝固を過剰に促進させる病態であり,発症を疑った場合には早急な対応を要する.

著者関連情報
© 2017 西日本整形・災害外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top